アトピーは本当に遺伝するの?将来設計のために知っておきたい事

妊娠_1~1

「子供にアトピーが遺伝したらどうしよう…」

そんな悩みを抱えていませんか。

ご自身がアトピーでつらい思いをした、もしくはパートナーが苦しむ姿を見てきた、だから子供に同じ思いをさせたくないのは当然です。

さらに子供のことだけではなく、パートナーは理解してくれるのか、子供は諦めなくてはいけないんじゃないかと、一人悩まれている方もいるかもしれません。

アトピーの治療は医者によって、言うことも違えば治療方法も異なります。

ステロイドをやめてみたり、食事制限や生活習慣を変えても治らずに長年苦しんでいる方もいます。

民間療法やサプリメントなど、良いと言われるものはなんでも試したけど、ダメだったという方もいます。

アトピーは治るのか治らないのか、今でも明確な答えはありません。

さらに身体的な悩みだけではなく、精神的なストレスも計り知れません。

顔が赤く腫れる、ゴワゴワなサメ肌、黒ずみ、 ジュクジュクしたり乾燥して皮膚が剥がれ落ちる…
そんな姿を周りはどんな目で見ているのかと、不安や恐怖を抱えていたと思います。

夏でも肌を露出しない服装にしたり、好きな服が着れなかった…
剥がれ落ちる皮膚を保湿剤やワセリンで必死に防いだ…

もしかしたら、いじめにあったり、心ない言葉に傷ついたこともあるかもしれません。

当事者や家族にしかわからない、苦しみやつらさがあると思います。

そんな心も体も苦しい思いを子供にはさせたくないと思うのは当然です。

しかし、世の中の多くは、アトピーは遺伝すると言います。

「父親(母親)からアトピーが遺伝した」 「アトピー体質だから仕方がない」「アトピーの遺伝子が見つかった」アトピーは遺伝するという情報ばかりです。

これでは子供を産むことが怖くなります。

しかし、実はアトピーが遺伝することと、アトピーが発症することはイコールではないのです。

ご自身もしくはパートナーがアトピーだから、必ず子供がアトピーで苦しむのではありません。

なぜならアトピーは遺伝だけが原因で、発症するものではないからです。

そこで今回は、なぜアトピーが遺伝すると言われるのか、子供に本当に遺伝するのかを詳しくお伝えします。

アトピーが遺伝するのではないかと、悩まれている方は是非参考にしてください。

 

 

 

1.アトピーは本当に遺伝するの?

世の中の多くはアトピーは遺伝すると言います。

医者が診断する時にも、家族にアトピーの方がいるか必ず聞かれます。

「親がアトピーだから遺伝した」「自分がアトピーだから子供もアトピーになった」こういった話もよく聞きます。

日本アトピー協会によれば、「アトピーの遺伝子を持った人にのみ発症する」と言います。[1]

しかし、なぜ不明な事ばかりで、治るのか治らないのかもはっきりしないのに遺伝すると断言できるのでしょうか。

それにはアトピーに関するある遺伝子が見つかったことが関係します。

 

 

 

2.アトピー遺伝子の発見

1
(出典:バイオエルティhttp://www.biolt.co.jp/menekichousei.html
2006年にアトピー性皮膚炎に関する 遺伝子が発見されました。[2]

それがフィラグリン遺伝子です。

これは皮膚のバリア機能と、保湿の働きを持つ遺伝子です。

この遺伝子に異常があると、皮膚が弱くなり乾燥して異物が入り込みます。

そしてアトピーが発症します。

この発見は大きなニュースになりました。

それまでアトピーはアレルギーと同じ、免疫異常が原因だと考えられていました。

そのためアトピーを解明するための研究も免疫異常を中心としたものでした。

ところがこのフィラグリン遺伝子の発見により、免疫異常から皮膚のバリア機能の研究に変化していったのです。

そして現在もアトピーと遺伝子の研究が、日々行われています。

2017年1月10には九州大学が、ある研究結果を発表しました。[3]

アトピー性皮膚炎の発症に関わるIL-31というかゆみを起こす物質があります。

しかしなぜこのIL-31が出現するのかは今までわかっていませんでした。

ところが今回の研究で、IL-31と遺伝子の関係が解明されたのです。

アトピーと遺伝子の関係が、また一つ明らかになりました。

この研究によりアトピーのかゆみを 根本から断つ治療薬の開発が期待されています。

このように、アトピーに関する遺伝子の発見をきっかけに、アトピーと遺伝に注目されるようになりました。

こうしてアトピーは遺伝するという考えが、多く聞かれるようになりました。

 

 

 

3.アトピーの原因とは

現在の日本の医療では、アトピーの原因をどのように考えているのでしょうか。

日本皮膚科学会によれば、次のように定義されています。

「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」[4]

つまり、アトピートとは、かゆみが主体の病気でありアトピー素因が原因だということです。

ではアトピー素因とは、いったいなんなのでしょうか。

 

 

 

4.アトピーになりやすい体質

素因(そいん)とは、その病気になりやすい体質の事です。

つまり、アトピー素因とは、アトピーになりやすい体質のことを言います。

具体的には次のように定義されます。[4]

・気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、
アトピー性皮膚炎を持つ家族がいるかどうか(家族歴)
・気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎が本人にあるかどうか(既往歴)
・アレルギーの主な原因となるIgE抗体を作りやすい体質

実はこの「体質」が遺伝と大きく関わっています。

次は体質について詳しくお伝えします。

5.遺伝と体質の関係

「体質」と言えば太りにくい体質だとか、体質改善というように使われます。

もう少し詳しくみれば、肌の色、髪・目の色や体型、身長、顔つきも体質と言えます。

体質とはその人の持っている特徴とも言い換えることができます。

そしてこの体質や特徴が遺伝するのです。

 

5-1.遺伝子=設計図

人には約60兆個の細胞があります。

この細胞によって、人の体が出来上がっています。

人間は骨、筋肉、皮膚、内臓、神経、血管などのパーツの集まりです。

そしてこのパーツの原材料が細胞です。

ではどのようにして細胞から骨や筋肉、皮膚などが作られるのでしょうか。

それは設計図があるからです。

こっちの細胞は骨を作る、あっちの細胞は皮膚を作るというように設計図が存在しているのです。

その設計図が遺伝子もしくは、DNAと言われるものです。

この遺伝子により髪の色、体格、身長、顔つきまで決まっています。

体質や特徴は遺伝子によって、決まっているということです。

アトピーの原因であるアトピー素因、つまりアトピーになりやすい体質は、遺伝子によって決まるのです。

 

5-2.受け継がれる遺伝子

この体質を決定する遺伝子が、親から子へ受け継がれることを遺伝と言います。

子供には父親と母親の遺伝子が、半分ずつ引き継がれます。

「うちは糖尿病の家系だ」「ガンの家系だ」などということがありますが、これも遺伝を言い表したものです。

「子は親に似る」ということわざ通り、親から子へ、そしてまたその子へと脈々と受け継がれているのが遺伝子です。

そしてアトピーの場合、親がアトピー体質であればその体質は子供へ遺伝することがあるのです。

 

 

 

6.アトピーが遺伝する確率

アトピー体質が遺伝するといっても100%遺伝するわけではありません。

その確率も様々な報告がありますが、厚生労働省の資料では、
・両親がアトピーの場合、子供の発症率は75%
・どちらか一方がアトピーの場合、子供の発症率は56%、としています。[5]

この数字を見て、やっぱりアトピーは遺伝するんだ…」と不安が強くなってしまったかもしれません。

しかし、冒頭でもお伝えしたように、遺伝と発症はイコールではありません。

アトピーが発症する原因は、遺伝子だけではないのです。

 

 

 

7.50%以上の確率で発症する、しかし…

アトピーの原因はアトピー素因、 つまりアトピーになりやすい体質にあります。

そして親がアトピーの場合、50%以上の確率で発症するとお伝えしました。

しかし、ここで重要なことがあります。

それは、アトピー体質が遺伝したから、必ず発病するわけではないとうことです。

しかし、家族歴や既往歴は、診断の参考項目とされています。

これがどういうことかと言うと、アトピー素因(遺伝)は参考にするものの診断は症状を診て行うのです。

 

 

 

8.遺伝子以外の原因

実際に本や厚生労働省の資料でも、「アトピー素因と環境因子が合わさって発症する」という記述が多くあります。

つまり、アトピーの原因は遺伝だけではなく、環境も影響するとうことです。

 

 

 

9.環境がアトピーを引き起こす

2
(出典:NPO法人標準医療情報センターhttp://www.ebm.jp/disease/skin/01atopy/guide.html

では具体的に環境とは、どのようなものなのでしょうか。

上の図のように、年代によって様々な原因があります。

環境とは気温や湿度だけでなく、食事やストレスなど生活習慣も含まれます。
・食物
特に乳幼児期には食物の関与が考えられる。

・汗
汗はアトピー素因との関与が明らかになっている。

・物理的刺激
皮膚をひっかくことや衣服が擦れることも関与する。

・環境因子
ダニなどのハウスダストや花粉も原因となります。

・細菌、真菌
黄色ブドウ球菌、ガンジダも関与する。

・接触抗原
皮膚のかぶれは症状を悪化させる。
石鹸、シャンプーなどが原因となることもある。

・ストレス
震災後に多くの患者さんで症状の悪化が見られた。
ストレスによる神経の作用が影響すると考えられている。
このように、アトピーの発症には、遺伝子以外の原因が多く存在しています。

一卵性双生児は遺伝子が全く同じです。

もし遺伝子だけが原因の場合、この双子にアトピー体質が遺伝すれば、2人共アトピーになります。

しかし実際には一人がアトピーを発症し、もう一人は発症しないこともあるのです。[5]

このことからも、アトピーの発症には遺伝子だけではなく、環境が影響していることがわかります。

 

 

 

10.アトピーの遺伝は予防できるの?

ここまでお伝えしたように、やはりアトピーは遺伝する可能性があります。

ただし、大切なことは、遺伝したらアトピーが発症するのではないことです。

遺伝と環境的な原因が合わさり、アトピーが発症するのです。

もしかしたらここまでの話を聞いて、「アトピーが遺伝することはわかった。
でも、遺伝を予防する方法はないの?」

そんな疑問や期待があるかもしれません。

そこで、アトピーの遺伝は予防できるのか、わかりやすくお伝えします。

 

10-1.子は親に似る

結論からお伝えすると、 アトピーの遺伝は予防できません。

「遺伝子」というのは細胞の中にある体を作り上げる設計図のことです。

これは親から子へ受け継がれます。

父親、母親それぞれ半分ずつの 遺伝子を受け取ります。

「遺伝」とはこのように遺伝子(設計図)が、親から子、そしてまたその子へと、受け継がれることを言います。

つまり、人間の体は遺伝によって受け継がれた遺伝子を元に作られているのです。

一つ欠けてもいけませんし、逆に増えてもいけません。

例えばダウン症候群は遺伝子の数が、通常よりも多くなる病気です。

遺伝子が欠けたり増えると、設計図が乱れてしまいます。

父親、母親それぞれから、半分ずつ受け継ぐことが必要なのです。

つまり、アトピーに関する遺伝子だけ、遺伝させないとうことはできないのです。

しかし、近年の医療や科学の発展に伴い、遺伝子そのものを治療して治すという遺伝子治療が登場しました。

 

10-2.遺伝子を治す遺伝子治療

遺伝は予防できない、それなら遺伝子そのものを治療して、 正常に戻そうとするのが遺伝子治療です。

実際に難病に対する有効性も認められています。

難病というのは原因不明、治療方法が確立しない病気のことです。

この難病が遺伝子治療によって、 治る可能性があると考えられます。

ただし、この遺伝子治療は、日本においては研究段階です。

研究費の問題などがあり、日本の遺伝子治療は遅れています。

今後、アトピー治療にとっても、有用な治療方法になるかもしれませんが、現時点では現実的ではありません。

 

10-3.遺伝は予防できないが、発症は予防できる

以上のように現時点では、遺伝そのものを予防することはできません。

しかし、一卵性双生児の例でもわかるように、アトピー体質が遺伝しても発症するとは限らないのです。

また、片親がアトピーだと、子供が発症する確率は56%と言われます。

しかし、44%はアトピーにはならないのです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

それは何度も繰り返しになりますが、遺伝と環境的な原因が合わさり発症するからです。

つまり、遺伝は予防できませんが、環境的な原因を取り除くことで、アトピーの発症は予防できるということです。

 

 

 

11.効果の認められたアトピー予防法

これまでにも次のような予防方法が研究されてきました。

・食物除去
・完全母乳栄養
・ダニの回避
・プロバイオティクス

しかし、これらの予防法は、最近の研究で効果が否定されています。

このような状況の中、アトピー発症を予防するために、有効なほうほうがあります。

その方法が保湿です。

保湿といえばアトピー治療では当然です。

ですので驚かれたり、信じられない方もいると思います。

しかし、厚生労働省の助成を受けた 堀向健太医師らの研究によって、その効果が明らかとなりました。[7]

この研究は、両親もしくは兄弟にアトピー性皮膚炎の既往がある新生児を対象に行われました。

家族歴がある新生児とは、言い換えると親がアトピーである新生児ということです。

この新生児118名に対して、生後32 週間まで毎日全身に保湿剤を塗りました。

するとアトピー発症率が32%低下する信頼性の高い結果が得られたのです。

また同様の研究が英米合同で行われました。[8]

この研究でも生後3週間までの新生児に保湿剤を使用することで、6ヶ月後のアトピー発症率が低下しました。

つまり新生児に対して、保湿剤を使用することで、 アトピー発症が予防できるとうことです。

具体的には次のような方法になります。

【ステップ1
生後1〜3週間以内に開始する。

【ステップ2
全身に保湿剤を塗る。

【ステップ3
1日1回以上行う。

以上の3ステップになります。

具体的な保湿剤については、 前述の掘向医師らの研究では、2e(ドゥーエ)という商品が使われています。

ただし、この方法にも問題点や課題があります。

例えば、
・どのような乳幼児に行うべきか
・いつまで使用するべきか
・何を塗るべきか
・保湿で予防しきれない場合はどうしたらいいか、などがあります。[9]

実際に行われる場合は、医師へ相談の上で行うようにしましょう。

 

 

 

12.まとめ

いかがだったでしょうか。

今まで子供にアトピーが遺伝したらどうしようと、悩まれてきたと思います。

同じ苦しみをして欲しくないことも健康なお子さんを望むのも当然です。

しかし、アトピーは遺伝するという情報がほとんどです。

もしかしたらアトピーは遺伝しないという、答えを探されていたかもしれません。

ただ、今回お伝えしたように、アトピーは親から子供へ遺伝するという考えが主流です。

未だに解明されていないことも多いですが、アトピーに関する遺伝子が見つかり、現在も研究が続けられています。

これだけを聞くと、がっかりしてしまったかもしれません。

ただ、ここで重要なのは、アトピーになりやすい体質が遺伝するということです。

アトピーの発症は、遺伝と環境の原因が合わさり、引き起こされるものなのです。

一卵性双生児の例でもわかるように、 アトピーが遺伝しても発症しないことがあります。

このように、遺伝そのものを予防することはできませんが、アトピーの発症を予防できる可能性があります。

その方法の一つとして、新生児期からの保湿に効果があることが認められています。

予防策があるということです。

今回の記事が少しでもあなたの苦しみを軽減し、将来設計にお役に立てれば幸いです。

引用・参考文献

[1]日本アトピー協会HP:http://www.nihonatopy.join-us.jp/padyna/genin/iden.html

[2] Smith FJD, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, Sandilands A, Campbell LE, Zhao Y, Liao H, Evans AT, Goudie DR, Lewis-Jones S, Arseculeratne G, Munro CS, Sergeant A, O’Regan G, Bale SJ, Compton JG, DiGiovanna JJ, Presland RB, Fleckman P, McLean WH. Loss-of-function mutations in the gene encoding filaggrin cause ichthyosis vulgaris. Nat Genet, 38: 337-342, 2006.

[3] The transcription factor EPAS1 links DOCK8 deficiency to atopic skin inflammation via IL31 induction ,Nature Communications,

10.1038/NCOMMS13946

(九州大学HP:https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/77)

[4]アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版

[5]アトピー性皮膚炎Q&A−コメディカルの患者指導のために-

[6] 清水宏:アトピー性皮膚炎,新しい皮膚科学第2版,109-113.

[7] Horimukai K, Morita K, Narita M et al:Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 134:824~830, 2014

[8] Simpson EL, Chalmers JR, Hanifin JM et al:Emollient enhancement of the skin barrier from birth offers effective atopic dermatitis prevention. J Allergy Clin Immunol 134:818~823, 2014

[9]和光堂HP: http://www.wakodo.co.jp/ikuji/kankeisha/report/baby12.html
中川直之,塚原祐子,鉄本員章:アトピー性白内障発症 に関与する臨床的危険因子の統計学的検討,あたらしい 眼科,2000; 17: 1679―1684.

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