肝臓とアンモニアの関係|血液検査でわかること

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肝臓の状態を調べる時に、 血液検査をしてアンモニア値を調べることがありますが、 馴染みがありませんよね。

健康診断でもALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPは調べられますが、 アンモニアは含まれていません。

しかし、肝臓の病気を調べるために、 アンモニア値を図る血液検査はとても重要になります。

アンモニア値が高いということは、 肝硬変や劇症肝炎などの 肝臓が重度に障害された病気の可能性があるからです。

さらに、脳や神経の機能を低下させてしまう 肝性脳症の危険もあります。

そこで今回は、肝臓とアンモニアの 関係について詳しくお伝えします。

 

 

 

 

1.肝臓の働き

肝臓とアンモニアの関係を理解するためには、 まず肝臓の働きについて確認することが必要です。

肝臓には数多くの機能が備わっており、その数は500とも言われています。

しかし、これらを全て理解することは 難しいので、主に次の3つの機能にわけられます。

・代謝
・解毒(げどく)
・胆汁(たんじゅう)の生成と分泌

健康診断でも見かける ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPは、 肝臓の代謝と胆汁に関する指標になっています。

では、肝臓の解毒機能の指標となるものはあるのでしょうか。

そこで登場するのがアンモニアです。

 

 

2.肝臓がアンモニアを解毒する

血液検査でアンモニアの値が高くなっている場合には、 肝臓の解毒機能が低下していることが考えられます。

しかし、解毒やアンモニアという言葉は聞き慣れないと思いますので、詳しくお伝えしていきます。

2-1.肝臓の解毒機能とは

解毒とは一般的には次のようなことを言います。

身体に入った毒を無毒にすること 引用:広辞苑

これだけではわかりづらいと思いますので、もう少し説明します。

最近は、テレビや新聞で デトックスという言葉を聞いたことがあると思います。

解毒を理解するためには、 デトックスをイメージするとわかりやすくなります。

デトックスとは、運動や岩盤浴で汗をかいたり、 食事を改善したりして便通をよくする方法があります。

このような方法で、体の中の悪いものを 外に出すことをデトックスと言います。

このデトックスという言葉は、 解毒を英語表記した時のdetoxificationから由来しています。

つまり、デトックスと解毒とは同じような意味を表しています。

このように、肝臓の解毒機能というのは、 体の中にある有害な毒を体の外に出すための デトックス作用と考えるとわかりやすくなります。

そして、この有害な毒の一つに、アンモニアがあります。

 

 

2-2.アンモニアとは

アンモニアとは窒素と水素の化合物で、 無色の刺激臭の強い気体のことです。

中学校の理科の授業で、 アンモニア水を作る実験をしたと思います。

鼻をつくような刺激臭がしたのを覚えているのではないでしょうか。

いかにも体に悪そうな臭いがしましたよね。

毒物及び劇物取締法では、 アンモニアは劇物として指定されています。

実は、このアンモニアが体の中でも発生するのです。

そして、アンモニア濃度が高くなると、 神経や脳の働きを低下させてしまう危険があるのです。

では、なぜ有害な毒が体の中にあるのでしょうか。

その理由は、主に食べ物から栄養を吸収して エネルギーに変える時の副産物として産生されています。

もう少し具体的にいえば、 タンパク質の一種であるアミノ酸が、 腸内で分解される時にアンモニアが作られているのです。

つまり、食べ物をエネルギーに変える時に、 体の中でアンモニアが作られているということです。

 

 

2-3.肝臓が有害なアンモニアを無害な尿素に変える

意外だったかもしれませんが、 有害なアンモニアは私たちの体の中で作られているのです。

これは、食べ物から栄養やエネルギーを 補給するためには避けられないものです。

ただし、先ほどもお伝えした通り、 体の中にアンモニアが蓄積されてしまうと、 脳や神経にダメージを与えてしまいます。

そこで、有害なアンモニアが 体の中にたまらないようにする仕組みが備わっています。

それが肝臓の解毒機能です。

体の中に発生したアンモニアは、 血液よって肝臓へ運ばれます。

そして、肝臓の働きによって、 有害なアンモニアから無害な尿素(にょうそ)に変換されます。

これが肝臓の解毒作用です。

尿素回路と言われることもあります。

さらに、尿素は腎臓(じんぞう)へ運ばれて、 尿として体の外に排泄されています。

このような肝臓の解毒機能によって、 私たちの体は有害なアンモニアから守られています。

 

 

 

3.血液検査でわかる肝臓の機能低下とアンモニア正常値

血液検査の結果、アンモニア値が高くなっている場合には、 解毒機能を含む重度な肝臓の機能低下が考えられます。

つまり、何らかの肝臓の病気の可能性があります。

その他にも、もともと肝臓の病気がある方にとっては、 病気の進行やを把握するためにも重要な検査になります。

アンモニア検査の正常値は次の通りです。

検査項目 名称 基準値(成人) 単位 検査の意味
NH3 アンモニア 12〜60 μg/dl 蛋白質の代謝の過程で産生され、神経毒性があります。肝障害時に高値となります。

引用:東邦大学医療センター大橋病院より
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/kensa/tjoimi0000000030-att/tjoimi0000000luh.pdf

なお、血液検査の結果については、 施設や検査方法によって変化する場合があります。

また、アンモニア値は運動や食後に増加することもあります。

そのため、主治医に検査結果の詳しい説明を受けるようにしましょう。

 

 

 

4.高アンモニア血症になる病気

アンモニア値が高い状態を、高アンモニア血症と言います。

高アンモニア血症かみられる場合には、 重度な肝蔵の病気の可能性があります。

特に、肝硬変や劇症肝炎、肝がんが考えられます。

しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、 病気があっても3分のの1の方、 自覚症状を感じないという特徴があります。

そのため、自覚症状を感じた場合には、 肝蔵の病気が進んでいることが考えられます。

こうしたことから、肝臓の病気は、 健康診断や他の病気の検査をした時に 見つかることが多くなっています。

このような特徴を念頭に置いていただき、 それぞれの病気について見てみましょう。

4-1.肝硬変(かんこうへん)

肝硬変とは、肝臓が硬く変化してしまう病気です。
慢性的に肝臓に負担がかかることが原因となります。

4-1-1.肝硬変の原因

・ウイルス性
B型肝炎やC型肝炎が原因となるもの
・アルコール性
長期間の飲酒が原因となるもの
・非アルコール性
肥満や糖尿病が原因となる非アルコール性脂肪肝が原因となるもの
・自己免疫性
自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎などの免疫異常が原因となるもの
・栄養、代謝性
ヘモクロマトーシスやウイルソン病などの栄養や代謝異常が原因となるもの

 

4-1-2.肝硬変の症状

・疲労感
・倦怠感(だるい)
・食欲不振
・体重減少
・手掌紅斑(手のひらが赤くなる)
・くも状血管拡張(顔や首、胸に赤い斑点ができる)
・黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)
・女性化乳房(男性の胸が膨らむ)
・睾丸萎縮(睾丸が小さくなる)

 

 

4-2.劇症肝炎(げきしょうかんえん)

劇症肝炎とは、肝臓の細胞が広範囲に渡って急激に壊死する病気です。
その多くは、B型肝炎ウイルスの感染が原因となります。

4-2-1.劇症肝炎の原因

・ウイルス性
日本ではB型肝炎ウイルスへの感染が原因となるものが最も多く30%を占める
・薬物アレルギー
薬によって引き起こされるアレルギーが原因となるもの
・自己免疫性肝炎
免疫異常による肝臓の炎症が原因となるもの

4-2-2.劇症肝炎の症状

・発熱
・筋肉痛
・倦怠感(だるい)
・食欲不振
・黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)

 

 

4-3.肝がん

国立がん研究センターによると、 2014年の肝がんの死亡率は 肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんに次いで第5位となっています。

(国立がん研究センター http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)

患者数は減少していますが、死亡数の多いのが肝がんです。

4-3-1.肝がんの原因

肝がんの原因は、主にウイルスへの持続的な感染によるものです。
ウイルスの感染による慢性肝炎、 肝硬変が肝がんを引き起こします。

その他にも次のような原因があります。

・ウイルス性
B型肝炎やC型肝炎が原因となるもの
・大量飲酒
・喫煙
・カビ毒

 

4-3-2.肝がんの症状

・腹部やみぞおちのしこり、圧迫感、痛み
・お腹の張り

 

 

 

5.危険な合併症「肝性脳症(肝性昏睡)」

アンモニア値が高く、 肝硬変や劇症肝炎などの重度な肝障害が考えられる場合に、 特に注意しなくてはならないことがあります。

それが肝性脳症(かんせいのうしょう) もしくは肝性昏睡(かんせいこんすい)といわれる合併症です。

肝性脳症は症状が進行すると意識を失い、 命の危険もあります。

アンモニア値が高い場合には、 この合併症について理解し、 すぐに対応できるようにしておくことが必要です。

5-1.肝性脳症の原因

血液中のアンモニア値が高くなること、 つまり、高アンモニア血症が肝性脳症の原因となります。

もう少し具体的にお伝えすると、高アンモニア血症になっている場合には、 肝硬変や劇症肝炎が起きている可能性があります。

これらの病気は、肝臓の解毒機能が重度に障害されています。

この解毒機能が低下することによって、 体の中にあるアンモニアが処理できなくなることは、 先ほどお伝えした通りです。

通常は有毒なアンモニアを 無毒な尿素に変えるのが肝臓の解毒機能ですが、 これが出来なくなってしまうと、 体の中にアンモニアがたまってしまいます。

このアンモニアは、血液によって脳へ運ばれます。

そして、アンモニアには、神経毒性があるため、 脳や神経の機能を低下させてしまいます。

まとめると、肝臓の解毒機能の低下によって体の中にアンモニアがたまり、脳や神経の働きを 低下させてしまうことが、肝性脳症の原因だということです。

 

 

5-2.肝性脳症の症状

肝性脳症の主な症状は意識障害(昏睡)です。
意識障害というのは、普段と少し様子が違うと感じる程度から、 完全に意識を失って、呼びかけたり叩いたりしても反応がない重度の状態まであります。

その他にも、精神症状や神経症状がみられます。

具体的な症状は次の通りです。

【精神症状】

・自発性の低下
・日中の傾眠
日中もぼーっとして刺激がないとすぐに眠ってしまう
・動作が緩慢になる
・イライラする
・子供っぽい言動になる
・抑うつ状態や無関心
・構成障害
視覚的な位置関係や空間の把握が困難となる  字が汚くなった、服が着られない、整理整頓ができなくなるなど

【神経症症状】

・羽ばたき振戦(しんせん)
「前へならえ」のように、前方に手を伸ばした状態で その姿勢を保持しようとすると、手が羽ばたくように震える
・筋強剛(きょうごう)、筋固縮(こしゅく)
筋肉が強くこわばる様子

このような肝性脳症の症状を意識障害(昏睡)の 重症度に応じて分類された、 肝性脳症の重症度分類(犬山分類)があるのでご紹介します。

肝性脳症の重症度分類(犬山分類)

昏睡度 精神症状 参考事項
睡眠覚醒リズムの逆転

多幸気分、時に抑うつ状態

だらしなく、気にとめない態度

retrospective※にしか判定できない場合が多い
指南力(時、場所)障害、物を取り違え

る(confusion)

異常行動(例:お金をまく、化粧品をゴ

ミ箱に捨てるなど)

時に傾眠傾向(普通の呼びかけで開眼し

会話ができる)

無礼な行動があるが、医師の指示に従う

態度をみせる

興奮状態がない

尿、便失禁がない

羽ばたき振戦あり

しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴

い反抗的態度をみせる

嗜眠状態(ほとんど眠っている)

外的刺激で開眼しうるが、医師の指示に

従わない、または従えない(簡単な命令

には応じうる)

羽ばたき振戦あり(患者の協力が得られる場合)

指南力は高度に障害

昏睡(完全な意識の消失)

痛み刺激に反応する

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる
深昏睡

痛み刺激にも全く反応しない

※retrospectiveとは「回顧的な」という意味。
つまり、過去を振り返って、「あの時の症状は肝性脳症だった」
としか判断できない場合が多いということ。

 

 

5-3.要注意!高アンモニア血症≠肝性脳症

ここまで、体の中にアンモニアが蓄積された 高アンモニア血症が、肝性脳症の原因になるとお伝えしてきました。

この肝性脳症は、症状が進行すると意識を失い命に関わることがあるため、 注意が必要な症状であることは確かです。

ただし、血液検査の結果、 アンモニア値が高かいということだけで、肝性脳症だと判断することはできません。

血液検査の他に、脳波の検査や症状などと照らし合わせながら、 他に考えられる病気を排除した上で診断されるものです。

つまり、血液検査のアンモニア値は、 肝性脳症を診断するための一つの手段だということです。

血液検査は必ず医師の指示のもと行われています。

そのため、検査結果については 医師からの説明をしっかりと受けましょう。

そして、体の中にアンモニアがたまる原因の 解決が大切であることを忘れないようにしましょう。

血液検査の結果だけをみて、すぐに肝性脳症だと慌てないでください。

 

 

 

6.まとめ

いかがだったでしょうか。

血液検査の結果、アンモニア値が高くなっていた場合には、 重度の肝臓病である肝硬変や、劇症肝炎が起きている可能性があります。

これらの病気では、肝臓の機能が著しく低下しています。

その中でも解毒機能が低下すると、アンモニア値が高くなります。

アンモニアとは、神経毒性のある有害物質であり、 脳や神経の機能を低下させてしまうものです。

本来はこの有害物質を肝臓が無害な尿素に変換して、 体の外へ排泄しています。これが肝臓の解毒機能です。

しかし、この機能が働かなくなってしまうと、 体の中に有害なアンモニアが蓄積されます。

これが血液検査でアンモニア値が高くなる理由です。

さらに、体の中にたまったアンモニアは、 脳や神経の働きを低下させてしまい、肝性脳症といわれる合併症を引き起こします。

肝性脳症とは、意識障害を主とした症状がみられ、 進行すると命の危険がある状態です。

すぐに治療や入院が必要となる場合があります。

血液検査の結果、アンモニア値が高くなっていた場合には、 重症の肝臓病や、危険な合併症を引き起こす可能性があります。

ただし、アンモニア値だけで全てを判断するわけではありません。

つまり、アンモニア値が高いことと、 肝性脳症はイコールではないということです。

血液検査の結果だけをみて慌ててしまう前に、 必ず医師に説明を受けましょう。

医師の説明を理解したり、その後の治療を効果的に進めるためにも、 今回の内容を参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

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